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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)2184号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人森山邦雄の上告趣意第一点について。

所論は、第一審判決が時効期間を経過し失効した輸送証明書であると認定した文書を期間経過後もなお有効であるとの独自の見解の下に原判決の法令違反を主張するものであるから、明らかに刑訴四〇五条に定める上告の理由に当らない。

同第二点について。

所論は、実害なき行為を法律上の保護利益を侵害したと認定したのは重大な事実の誤認であるというのであるから、明らかに刑訴四〇五条に定める上告理由に当らない。また、犯罪成立には罪となるべき構成要件を充足する事実あるを以て足り必ずしも実害又は法益の侵害を要するものではないから、同四一一条一号を適用すべきものとも認められない。

同第三点について。

所論は、明らかに刑訴四〇五条に定める上告理由に当らない。そして、所論訓令のごときは臨時物資需給調整法第一条第一項の命令に対する同第四項の同意たる性質を有するに過ぎず、従って、何等法令を改廃する効力を有するものではないし、また、所論訓令に基き昭和二四年五月二七日公布された指定物資輸送証明規則第一条に基く別表第一によって木材の適用数量七瓲又は二十石以上を改正され、同規則の附則第一項によって同年六月二〇日から施行され、同時に同附則第二項によって従前の重要物資輸送証明規則は廃止されたが、同附則第三項においてこの命令施行前になした行為に対する罰則の適用については旧令はこの命令施行後もなおその効力を有するとの特別規定の存するところから見れば、本件犯罪後における旧令の別表の改廃のごときは既に成立した刑罰を廃止するものでない立法者の意思であること明らかであるから、所論は刑訴四一一条五号の主張としても採用し難い。

同第四点について。

所論は量刑不当の主張であるから、明らかに刑訴四〇五条に定める上告理由に当らないし、また、記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとも認められない。

同第五点について。

しかし、所論再審事由を認むべき法定の証明若しくはあらたに発見した明らかな証拠は何等存しないから、所論は、刑訴四〇五条各号のどれにも当らないばかりでなく、同第四一一条四号の主張としても採用し難い。

よって、同四一四条三八六条一項三号に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

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